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「たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に」のあらすじと感想

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)

今年読んだ本の中で一番出会いたくない「女性」に出会ってしまいました。
「この女まじで狂ってる」
頭の中に自分の感想が文字化されて鮮明に見えるくらい、登場する人物に圧倒された1冊です。

あらすじ

恋愛に奥手だし、女心もわからない。恋愛なんてしてもしなくても一緒だと思っていた公洋の前に現れた2人の女性。
1人は居酒屋で出会ってデートをすることになったななちゃん。
もう1人は職場が一緒の裕子さん。気になるのはななちゃんだけど、なぜだか裕子さんからも好意を寄せられているようで、始まってもいない恋に悩む公洋。

しかし、ある日職場の先輩に「峰岸(裕子)は危険だぞ」と忠告される。
ななちゃんへの恋心に気づいた公洋は裕子の好意を断ろうとするが、その際に裕子のこれまでに見えなかった異常な「妄想癖」に気づき始める。
そして裕子の好意を断ったことをきっかけにある事件が起こります。

身の毛がまじでよだった狂った妄想癖

どんでん返しが!というよりは、個人的にはこの「裕子さん」の狂った妄想癖がまじで恐かったです。
どれだけ周りが「正しい」事実を伝えようとしても、一度思い込んだら絶対に曲げないのが裕子さん。
仕事のミスを上司として庇ったつもりが裕子さんには「愛の形」として受け止められたり、純粋に仕事を終わるの待っているだけなのに「私と2人きりになりたいのね」と捉えたり、公洋の友達からのいじりを「親友にも話してくれる関係性」と勘違いしたり・・・。
裕子さんの中では既に「付き合っていて愛を確かめ合った」関係性だと思い込んでいて、その関係性を邪魔する人は彼女の「嘘」で陥れようとします。  

誰が公洋の人生を狂わせてしまったのか

2人の女性に出会うことによって公洋のそれまで平穏だった日々は突如終了してしまいます。
大人な女性に見えた裕子さんは人に危害を与えるほどの思い込みが激しいサイコパスだし、絶対何か裏があると思ったななちゃんはやっぱり嘘つきだし。

物語自体は3部構成になっていて、各章でそれぞれの視点からストーリーが語られています。
公洋、裕子さん、ななちゃんの順番に話は進んでいくのですが、真ん中に裕子さん視点が挟まれていることによって「実は公洋が嘘つきで、騙されているのはほかの2人なのじゃないのか?」と思ってきます。
作者がつけた本のタイトルによって「誰が嘘つきなのか?」と疑問を思いながら読み進めていたので、純粋に物語を読むことができませんでした。(笑)

なかなかの後味が悪いバッドエンディング

これはイヤミスと言っていいのか!?
でもこれ以上話は進めない所まで来てちゃんと終わってるし・・・。
物語の終わり方としては一応読者が納得する終わり方になっているのですが、ハッピーエンドではないので読み終わった後主人公への切ない気持ちと、裕子さんへの恐怖心で悶々させられます。

イヤミス感に悶々はさせられますが、読み始めた人は騙されるスリル感と頭をひねりながらも続きが気になって一気読みを必ずしてしまうだろう1冊でした。